光明の絶えた星屑をたどりゆく何者でもない世界線上
今日もまた並行世界の講義室がしずまりかえってざあざあと雨
空色の傘が濡らしたリノリウムに寝転がって見た夢がつめたい
夕立に文字がにじんだ宛て先を訪ねゆく脚のさきから融ける
両足のあいだと緩いワンピースをすり抜ける初夏に恥じらいを脱ぐ
さみしいとブルースの空が言いました、眠りのなかのひとに会えない
薫風の午睡のすきに背中からくいこむ空の茫洋茫洋
白波が洗った足の小指からひかりの粒になって空まで
滿汐もさらわぬ城に鼻白む空々しさは浅瀬のブルー
白雲のたなびく空のサーファーをさがす迷子の薄き足跡
清潔な耳飾りの喰う柔肌のくめどもつきぬファントム・ペイン
まだわたし不能なわけじゃないもんね先の潰れたペンを回して
光明の絶えた星屑をたどりゆく何者でもない世界線上
2017 初夏