diary

死んだ友達と生きた友達の数が同じくらいになってくる

詩人から突然電話がかかってきて、明日は空いていないかと訊かれた。いかにも空いていなかった。某ヴァイオリニストのコンサートの隣席が空いているのだが、と彼は言った。行きます、と私は即答して、無理やり予定を調整した。翌日のテストの準備を何もして…

시あるいは詩についての思い出

「これを持っていってもいいですか?」と駅構内をあるく中年の女性に世界言語でぬけぬけと話しかけて、申し訳なさそうに首を横にふられたので、こちらも申し訳なくなって少し後悔したけれど、きれいに細くまるめられたその紙切れを手に入れられたのは結果的…

愛すべきカメレオンに捧ぐ

言語や論理の限界を理性の限界と呼ぶつもりはないが、他方で身体にみなぎる理性が何か一貫した啓示を得たとも言い難い。いずれにせよ首尾一貫した所感を文章として記しえないので、断片的な備忘録を残したい。 ヘレン・ケラーに捧げられたあの建物が14の色に…

奈義にて/常識的で、親切で、話し過ぎず、黙り過ぎない人々

奈義にて 磯崎新に生成りのような産着を着せられたその分身が生まれ落ちた二か月後に私もまた産声を上げた。分身がその中に様々な有機体を放り込んで人間の誕生の実験をしているあいだ、誕生した私は絶望的な天命に満ち満ちた世界に愚かしくも自らの有機体を…

うたうゆびづくり/無色の国旗

1. うたうゆびづくり どうしても、鍵盤に向かって半泣きになりながら日暮らし音楽を切り刻み再構築を続けるくらいの気迫が欲しいのである。それは能力に見合った音を卒なくうたいあげるような手すさびであってはならない。技巧を尽くして足の裏の腱が震える…